※この記事はあくまで私個人の体験と感想を綴ったものです。不妊治療にはさまざまな状況や考え方があり、医学的な判断については必ず専門の医療機関にご相談ください。
「自分にできること」を模索し続けた日々
私と妻が結婚したのは、お互いに35歳前後の時でした。
「子供を授かりたい」という共通の願いがありましたが、現実は想像以上に厳しく、私たちは悩んだ末に不妊治療を受ける道を選びました。
それから今の生活(双子の育児)に繋がるまで、約2年間の道のりは決して平坦ではありませんでした。当初、通院して治療に向き合っていたのは妻だけ。家で懸命に頑張る彼女の姿を間近で見ていた私は、夫として「自分に何ができるのか」を常に考えていました。
通院前後の日は家事をすべて私が引き受け、少しでも妻の心と体が休まるように努める。自分なりに必死に並走していましたが、心のどこかで、
「家事のサポートだけで、自分は本当に当事者になれているのだろうか」
という自問自答が消えることはありませんでした。
「自ら言い出す」という高いハードルを超えて
病院を2軒ほど転々とし、ようやく3軒目に決めたクリニック。そこには、男性側の診察を行う「メンズ診察」がありました。
ネットで情報を集める中で、「男性側にも原因があるかもしれない」という知識は持っていましたが、それを妻に切り出すのは簡単ではありませんでした。
男性にとって、自分の体を検査することは、どこか“自分の弱さを見せること”のように感じてしまう側面があります。
「もし自分に問題が見つかったらどうしよう」という怖さや、言葉にしづらい恥ずかしさもありました。
それでも、妻に促されて動くのではなく、「自分から一歩踏み出したい」という思いが勝りました。
「自分も診察を受けてみたい」
そう伝えた時の妻の、驚いたような、でも本当に嬉しそうな表情は今でも忘れられません。

待合室で見つけた、静かな決意
いざメンズ診察のために病院へ行くと、想像以上に多くの男性が順番を待っていました。
スーツ姿の人、作業着のまま駆けつけた人。世代もさまざまでしたが、皆が静かに、そして真剣にその場に座っていました。
それぞれが葛藤を抱えながらも、妻を支え、自分自身もこの問題に真正面から向き合おうとしている。
その光景を目の当たりにして、
「自分一人じゃないんだ。みんな同じように戦っているんだ」
と、改めて背筋が伸びる思いでした。
「同じ景色を見る」ことで深まった絆
診察を受け、治療のプロセスを“同じ景色として共有”するようになってから、夫婦の関係に変化が現れました。
私の行動を見て、妻はそれまで以上に私を応援してくれるようになり、絆がより深まったのを実感しています。
不妊治療が持つ“重さ”も、未来への“希望”も、二人で同じ方向を見ながら歩めるようになったこと。
最終的に授かることができたのは幸運だったかもしれませんが、それでも、あの時に自分から一歩踏み出した勇気が、今の私たちの家族の形を作ってくれたのだと信じています。
最後に
不妊治療において、どうしても女性側の負担が大きくなりがちです。
男性が病院の門を叩くのは、確かに勇気がいります。
無理に大きな一歩である必要はありません。
でも、もし心のどこかに「自分も向き合ってみようかな」という小さな声があるなら、その気持ちを大切にしてみてほしいと思います。
その一歩が、夫婦で歩む未来をそっと明るく照らしてくれるはずです。
